60代になると、葬儀に参列する立場も変わり、これまでの喪服がなんだか合わなくなったな、と感じる瞬間が増えてきますよね。
体型カバーもしたいし、着心地が楽なもの、例えば前開きのワンピースなんかも気になります。
でも、品格は保ちたいし、そもそも60代にふさわしい喪服はどこで買うのが正解なのか、パンツスタイルはマナーとしてどうなのか、レンタルという選択肢もあるのか…と、60代の喪服の選び方には悩みが多いかなと思います。
いざという時に恥ずかしくない、自分に合った一着を見つけたいですよね。この記事では、60代だからこそ知っておきたい喪服選びのポイントやマナーについて、一緒に見ていきたいと思います。
<記事のポイント>
・60代で喪服を見直す理由(立場と体型の変化)
・品格と実用性を両立する選び方(前開き・素材)
・60代の小物マナー(パール・バッグ・靴)
・購入先とレンタルのメリット・デメリット
60代の喪服選び方:品格と実用性の両立

60代を迎えると、若い頃に買った喪服がしっくりこなくなるのは自然なことかもしれません。
ここでは、なぜ60代が喪服を見直すタイミングなのか、そして現代の60代に求められる「品格」と「実用性」をどう両立させるか、その基本的な考え方を見ていきましょう。
60代で喪服を見直す2つの理由
60代で喪服を見直す方が多いのには、大きく2つの理由があるかなと思います。
一つは、「立場」の変化ですね。 これまでは「一般会葬者」として参列する機会がほとんどだったかもしれませんが、60代になると、故人の兄弟姉妹や配偶者の親族など、「遺族・親族」側として参列者を迎える立場になることが増えてきます。
迎える側となれば、一般会葬者よりも格式が高く、品格のある装いが求められます。これまでの一着が少しカジュアルなものだった場合、立場にふさわしい上質なものが必要になる、という訳です。
もう一つの理由は、「体型」の変化です。 若い頃に購入した喪服が、年齢を重ねる中での自然な体型の変化で、窮屈に感じたり、シルエットが合わなくなったりするのは当然のことだと思います。
長時間の儀式で疲れない「着心地の良さ」や「着脱のしやすさ」は、60代にとって本当に切実な問題ですね。
60代女性の前開きワンピースが人気な訳
最近の60代向けの喪服で、特に人気を集めているのが「前開き(フロントファスナー)」のデザインです。
従来のワンピースは背中にファスナーがあるものが多く、年齢と共に肩の可動域が狭くなると、一人でファスナーを上げ下げするのが本当に大変になります。
その点、ワンピースの前面にファスナーが隠されている「前開き」タイプは、腕を後ろに回す必要がなく、驚くほど楽に着替えることができます。
これは単なる「便利な機能」という以上に、60代の喪服選びにおける「必須要件」になりつつあるのかもしれませんね。
体型カバーとロング丈で品格を保つ

60代の喪服は、身体のラインを拾いすぎない、ゆったりとしたシルエットが好まれます。Aラインのワンピースや、お腹周りをカバーしてくれるロングジャケットのアンサンブルなどが人気ですね。
特に重要なのが「スカート丈」です。
膝が完全に隠れるのは最低条件ですが、60代ではさらに品格を重視して、ふくらはぎが隠れる「ミディ丈」や「ロング丈」が主流です。椅子に座った際にも膝頭が絶対に出ない、十分な長さを確保することが、品格ある装いにつながります。
また、夏用の喪服であっても、肘が隠れる五分袖~七分袖を選ぶなど、肌の露出を徹底的に抑えるデザインがマナーとされています。
自宅で洗える素材はお手入れが楽
最近は、自宅の洗濯機で洗える「ウォッシャブル素材」の喪服も非常に増えています。
特に夏場は汗をかきますし、儀式の後はすぐに清潔にしておきたいもの。毎回クリーニングに出す手間や費用を考えると、自宅で手軽にお手入れできるのは大きなメリットだと思います。
品質と機能性のバランス
ただ、お手入れの楽さ(ウォッシャブル)を優先するあまり、素材感が損なわれないかは注意したい点です。
60代の品格として、並んだ時に違いが分かるような「深く濃い漆黒」であることも大切。最近は、「漆黒」でありながら「洗える」という両方を満たした高機能な素材も増えているので、そういった点もチェックして選ぶと良いですね。
喪服の格式とTPOの基本マナー
喪服には格式があり、立場や場面によって着るものが変わります。60代は両方の立場を経験する可能性があるので、基本をしっかり押さえておきたいですね。
- 正喪服(最も格式が高い):喪主や故人に最も近い遺族が着用します。
- 準喪服(一般的な喪服):いわゆる「ブラックフォーマル」です。遺族・親族、一般会葬者の両方が葬儀・告別式で着用します。60代が準備する喪服は、この準喪服が基本となります。
- 略喪服(最も格式が低い):通夜や三回忌以降の法要で着用します。地味な色のスーツやワンピースです。
「平服でお越しください」の正しい解釈
法要などで「平服で」と案内された場合、これは「普段着で良い」という意味では絶対にありません。これは「略喪服でお越しください」という意味なので、黒や紺、グレーなどの地味なスーツやワンピースを着用するのがマナーです。間違えてカジュアルな服装で行かないよう、注意が必要です。
60代の喪服の選び方:アイテム別マナー

喪服を選んだら、次は小物ですね。実は、服装以上に小物でその人の見識が問われることもあるんです。
特に60代として恥ずかしくないよう、アクセサリーやバッグ、靴などの厳格なマナーもしっかり確認しておきたいところです。
60代のパールのマナー:大きさや長さ
葬儀の場で唯一許されるジュエリーが「涙の象徴」とされる真珠(パール)です。ただし、着用は必須ではありません。
もし着用する場合は、「一連(1連)のシンプルなもの」を選びます。色は白、グレー、または黒蝶真珠などですね。
60代の方は、お祝い事のために購入した立派なパールをお持ちのことも多いかと思いますが、それが葬儀の場ではマナー違反になるケースがあるので注意が必要です。
【厳禁】葬儀でNGなパールネックレス
- 2連・3連・重ね付け:「不幸が重なる」ことを連想させるため厳禁です。
- ロングネックレス:「悲しみが長引く」ことを連想させます。
- 8mmを超える大粒のもの:お祝い事では「良質」とされますが、葬儀では「華美」とみなされ、ふさわしくないとされます。7mm~8mm程度が最適です。
- 一粒パール:チェーン(金属)が見えるものはNGです。
お悔やみの場では、「控えめであること」が何よりも優先されると覚えておきたいですね。
バッグと靴のマナー:素材に注意
バッグや靴にも、厳格なマナーがあります。
バッグ
黒の布製(ポリエステルやサテンなど)が最もフォーマルです。光沢のない革製も可とされますが、最も注意したいのは素材です。
ヘビ革、ワニ革、スエード、毛皮(ファー)など、殺生を連想させる素材は厳禁です。また、光る金具や大きなリボン、ブランドロゴが目立つものも避けます。
靴
黒の布製または光沢のない革製の、シンプルなプレーンパンプスが基本です。ヒールは太めで、高さは3~5cm程度が歩きやすく疲れにくいかと思います。
ピンヒールやウェッジソール、ローファーはカジュアルとみなされるため不可です。
ストッキング
黒の薄手(30デニール以下が目安)のストッキングを着用します。厚手の黒タイツはカジュアルになるため、葬儀・告別式では避けるのが無難ですね。
60代男性の靴とネクタイのマナー

ご主人やご子息の服装も気になるかもしれません。男性の喪服(準喪服)は、ビジネススーツの黒とは全く違う「漆黒」のフォーマルスーツが基本です。
特にマナーが問われるのが「靴」です。
男性の靴とネクタイのポイント
- 靴のデザイン:最もフォーマルなのは「内羽根式のストレートチップ」(つま先に横一文字の切り替えがあるデザイン)です。ウィングチップ(W型の飾り)やローファーは厳禁です。
- ネクタイ:黒無地で光沢のないもの。結び目の下に「ディンプル(くぼみ)」は作りません。ディンプルは慶事での装いなので注意が必要です。
- ネクタイピン:原則として着用しません。
パンツスーツはマナー違反?
女性の喪服として最もフォーマル(準喪服)とされるのは、スカートやワンピースです。
ただ、最近はパンツスーツも増えていますね。足元がおぼつかない場合や、寒冷地での葬儀、体型カバーの観点から選ばれる方も多いようです。
マナー違反とまでは言えませんが、まだスカートスタイルが正式と考える方もいらっしゃることは覚えておいた方が良いかもしれません。
もし選ぶ場合は、ワイドすぎないストレートラインで、ジャケットはヒップが隠れる長めのものを選ぶと、フォーマル感を損ないにくいかなと思います。
喪服はどこで買う?購入とレンタル
60代にふさわしい喪服は、どこで買うのが良いのでしょうか。主な選択肢の特徴をまとめてみます。
- 百貨店:品質や素材(黒の深さ)は随一です。専門知識を持つ販売員に相談しながら「最高の一着」を選べる安心感があります。予算は5万円~10万円程度が目安でしょうか。
- フォーマル専門店・紳士服店:品質と価格のバランスが良いのが特徴です。サイズ展開も豊富ですね。
- 通販・オンラインショップ:「前開き」や「洗える素材」、「ロング丈」、「ゆったりサイズ」など、60代のニーズに特化した実用的な商品のラインナップが圧倒的に豊富です。試着サービスがあるかを確認すると安心ですね。
また、「レンタル」という選択肢もあります。
急な葬儀で準備が間に合わない時や、体型変化が心配で「買う」のをためらう場合には非常に便利です。保管場所やクリーニングの手間が不要なのも大きなメリットです。
60代の喪服の選び方:品格ある一着を
60代の喪服選び方について見てきましたが、いかがでしたでしょうか。
60代の喪服選びは、単にマナーを守るという以上に、故人や遺族への深い敬意と、自らの社会的な立場(品格)を示すための大切な準備だと感じます。
若い頃に購入した喪服を見直し、「遺族・親族」という立場にもふさわしい「品格ある素材(深い黒)」と、年齢を重ねた身体に寄り添う「実用性(前開き・着心地)」、そして厳格なマナーに基づいた「正しいデザイン」の3つの要素を満たす一着を選びたいですね。
特に、女性のパール(8mm以上はNG)やバッグ(殺生NG)、男性の靴(内羽根式ストレートチップ)といった小物の細部にこそ、その人の配慮と見識が現れると言われます。
この記事でご紹介した情報は、あくまで一般的なマナーや選び方の一例です。地域や宗派による違いもありますので、不安な点はご家族や葬儀社の専門家に確認することをおすすめします。
万全の準備を整え、自信を持って、厳粛な場で故人を偲ぶことに集中できる「一生物」の喪服をお選びください。
